「地政学」と聞いて、どんな印象を持つでしょうか?
なんとなく軍事っぽいとか、国際政治っぽいイメージかもしれません。けれど実は、地政学は単なる学問の枠を超えて、私たちの生き方や働き方、社会の構造を深く理解する“根本の力学”ともいえる視点です。
でも…日本の学校ではほとんど教わる機会がありません。
むしろ、地政学という言葉にすら触れずに社会人になる人がほとんどです。
なぜでしょうか?
地政学とは?なぜ根本に触れる視点なのか
地政学とは、地理的な条件──たとえば山脈や海流、気候、資源の分布──が、軍事や経済、政治、そして文化の形成に与える影響を分析する学問です。
つまり、地理という「変わらない前提条件」が、国同士の力学や人間社会の“流れ”を決めてしまう。これを読み解くのが地政学なんですね。
この視点を知っていると、歴史の繰り返しの意味や、戦争が起きる場所の必然性が見えてきます。
ビジネスでも、目の前の数字やニュースの裏にある「地理的な制約」や「大きな流れ」を感じ取れるようになる。
まさに、“目先の情報(波)に流されない”ための大事な力です。
戦後教育と“地政学の空白”
では、なぜ日本では地政学を教わらないのでしょうか?
これは戦後教育の影響が大きいと言われます。
第二次世界大戦で日本は敗戦国となり、GHQの占領政策の中で、軍事色が強い知識や戦略的思考は「再び戦争を引き起こしかねない」として抑制されました。
地政学はまさに軍事と結びつきやすい学問だったので、タブー視され、教育の場から姿を消したんですね。
結果として、地政学を学ぶ機会は途絶え、歴史や社会の授業は“点”の暗記中心に。
それに慣れた私たちは、ニュースや目先の情報に流されやすくなり、“全体の流れ”を感じ取る力を失っていったのかもしれません。
“波”に流される社会、見失う“現在地”
地政学の視点を持たない社会では、目の前のトレンドやニュース(波)ばかりが大きく見えます。
その裏にある“地理的条件”や“根本の流れ”(粒)を見失うと、気がつけば数字やスローガンに振り回され、どこに向かっているのかも見えなくなってしまう。
これは、私がかつて海上自衛隊で学んだ「機位の確認」にも似ています。
航海では“現在地”を把握することが最も大事です。
もしそれを見失えば、どれだけ高性能なエンジンがあっても、どんなに優れた地図があっても、目的地には着けません。
地政学を取り戻すために──“根本の力学”を学ぶ
地政学を学ぶことは、単なる軍事的な戦略ではなく、自分や社会の「現在地を把握する力」を育てることだと感じています。
それは、日々の仕事や暮らしに直結する視点です。
目の前の数字やニュースに振り回される前に、「なぜそれが起こるのか?」「何が背後にあるのか?」を探すクセをつける。
まさに、物理や力学でいう“根本の法則”を見抜く訓練のようなものですね。
まとめ
地政学は“支配されないための知恵”であり、ビジネスや人生における“現在地の確認”の手段でもあります。
それを学ぶことは、「物事の本質を見抜く力」を取り戻すことにつながる。
現代社会の波にのみ込まれないためにも、私たちは“根本の力学”に目を向ける必要があるのかもしれません。